日本史上、もっともきびしい上司の下で、奇跡の出世をした男。
木下藤吉郎の智恵の冴えを描く司馬遼太郎版『太閤記』。
日本史上、もっとも巧みに人の心を捉えた“人蕩し”の天才、豊臣秀吉。
生れながらの猿面を人間的魅力に転じ、見事な演出力で次々に名将たちを統合し、ついに日本六十余州を制覇した英雄の生涯を描く歴史長編。古来、幾多の人々に読みつがれ、日本人の夢とロマンを育んできた物語を、冷徹な史眼と新鮮な感覚によって今日の社会に甦らせたもっとも現代的な太閤記である。
本文より
ひどい身なりだ。高野聖たちも最初は、
(これは人間の子か)
と怪しんだほど、その姿がすさまじい。赤っぽい蓬髪(ほうはつ)をわらで結び、破れた麻の布子を一枚まとい、腰のあたりを縄でしばっている。
「どこの子だ」
何度もたずねてみたが、言わない。そのくせ愛嬌はわるくない。むしろよすぎるくらいだ。口を横に裂いたような笑顔で、顔いっぱいで破顔(わら)う。わらうと顔が皺ばみ、
(まるで、猿じゃな)
と、高野聖たちはみなおもった。(「商人聖(あきないひじり)」)
司馬遼太郎(1923-1996)
大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。1993(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、1971年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。
以上、Amazonの紹介文
新史 太閤記(上)(新潮文庫) Kindle版
司馬 遼太郎 (著)
感想
体調を崩して寝ている間に学びの読書でなく、娯楽の読書もしようと思って以前好きで読んでいた歴史小説読み始めてみました。太閤記は読んだことあるし、映画やドラマでも何度も見ていますが。
豊臣秀吉のストーリーはやっぱ面白いです。
豊臣になる前の羽柴筑前の守秀吉 のころが好きだったりしますが。
アイディアと努力で底辺の人間がどんどん出世していく。しかも日本の頂上まで。
こんなに面白いストーリーはないわけで。後は物語としての演出ですが、司馬遼太郎先生の本は面白いんですよねぇ。長編にもかかわらずスラスラ読めてしまいます。
幼少期から信長に出会うまでの話が結構長いです。太閤記と言ったら藤吉郎が信長の草履とりになるところからはじまるものもあるかと思うんだけど。それ以前の苦労していたころをしっかり書いてくれているので、人たらしとしての秀吉の魅力が良く伝わっていると思います。
信長に仕えてからは持ち前の発想力や行動力でみるみる出世していくわけですが。
そこはもう読んでいて痛快な部分
上巻の話は本能寺の変の前
秀代氏は毛利攻めの前段階、播磨(姫路や神戸など現在の行後付近)を収めるのに手間取っていて。利でことをなす織田信長の政治手法が限界に来ていたころ。
秀吉の軍師黒田官兵衛が信長を裏切った荒木村重によって伊丹城に幽閉されたはなしまで。
そこでは、信長の命令で官兵衛の人質である息子を殺せと命じたけれど、竹中半兵衛によって救われたというはなしがあるんだけど
そこがけっこうあっさり短く描かれていたのがちょっと残念だったかなと。
そこは別の本で補おうと思います。
久しぶりに娯楽としての読書して思います。
やっぱ本ってよいですねぇ。
文字ではなく音声でしか読めなくなっちゃいましたけどね。
そういう技術の進歩に感謝です。