スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫)-羽田 圭介 (著)/読書履歴

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「じいちゃんなんて、早う死んだらよか」。

ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のために面接に臨む日々。
人生を再構築していく中で、健斗は祖父との共生を通して次第に変化していく――。

瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、青年の稚気と老人の狡猾さを描ききった、羽田圭介の代表作。

新しい家族小説の誕生を告げた第153回芥川賞受賞作が待望の文庫化!

以上、Amazonの紹介文

スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫) Kindle版
羽田 圭介 (著)

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感想

2015年の芥川賞受賞作品
失業再就職活動中の30歳手前の主人公と介護を受けている87歳の祖父の話し

「じいちゃんなんて、早う死んだらよか」と毎日毎日ぼやいている要介護の祖父は人生におけるスクラップ状態。そんな祖父を横目に主人公の孫は日々筋トレで身体を鍛え資格取得のための猛勉強をし自らをビルドアップしながら再就職の機会を待つ毎日。

失業中なので孫が任されているのか。祖父の介護をする様子は祖父孝行で関心な孫だなぁと思える。そんな主人公なのだが、ある日考えたことは、「死にたい」という祖父の言葉通りの願いを叶えるにはどうしたらいいのかということ。
そのことを介護職をしている友人に相談したところ、祖父の自立など考えずなんでもしてあげてしまえば次第に弱っていくというアドバイスを受ける。祖父孝行な主人公はそのアドバイスの通り献身的な介護を行うのだが。

そこで思ったことだけど。
日本の介護の問題を指摘する別の書籍を読んだことがありますが。問題とは日本の介護は欧米に比べて手厚すぎるというもの。欧米は基本的にはなんでも本人にやらせる自立を前提とした介護を行うが、日本は例えば転倒など事故が起きないように。など。責任回避が優先されるのでなんでも介護職員がしてあげる。動くことも考えることも、しなくていい状況に置かれたら本人はどんどん衰えてしまう。、
人間の機能は使わなければどんどん衰えていくのであって、日本の健康寿命が短く寝たきり老人が欧米の5倍もいるのはそのせいである。というのがその本の主張なのですが。

たまたまいま僕はひざの故障で運動できない期間が1か月過ぎたところですが、この素子になると動かないとどんどん衰えるものなんだなぁと実感をしています。

そして友人の介護職員が教えてくれたことはまさにその通りのこと。祖父を動かすな考えさせるなということで。祖父の安寧なる死を願う主人公は献身的な介護を行うのです。
主人公地震は常に自分を追い込みストイックに鍛えてビルドアップしていく描写がされていてとても対照的に描かれています。

ところが。次第に祖父の態度や言動から、本当は死にたいなんて思っていないのではないかということに気が付き始める主人公ですが。
そりゃそうですよね。生物の本能として死にたいなんて思うことはないはずなのに、言葉で「早く死にたい」と言わなければいけない状況になっている。そして世の中にはきっとそういう老人が多いのでしょう。だからこの作品が芥川賞を受賞するくらい注目されているのでしょうし。そうなってしまう理由は、本人の身体の衰えの問題や、家族との関係や、社会の中での幸福感なのか。様々な要因があるだろうとは思いますが。

僕は今年還暦で。これから高齢者になっていくわけだけど。
なので、嫌でも自分の将来のことを考えながら読み進めることになりましたが。

自分がその年になったとき、自分はもうスクラップだなんて思わなくてすむよう。今をどう過ごしたらいいだろう。今できることの一つは、要介護などにならないよう身体をビルドアップし続けて健康に留意することだろうな。

そんな風に思います。

本書が「スクラップ・アンド・ビルド」というタイトルになっているのはそういうメッセージが含まれているからなんじゃないのかな。と思います。


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